ギザギザ波型デザインが懐かしい東芝のキングパワーUの006P(角形9V)です。この電池のギザギザは上部分が「白」、下部分が「赤」に塗り分けられていて、なかなか凝っているデザインになっていますね。
写真では同じような電池に見えますが、左が“東京芝浦電気株式会社”名義、右が“東芝電池株式会社”名義の社名表記となっていて注意書きも微妙に違っています。型番は側面に“[UZ](丸囲い)6F22”の記載があります。
裏面はこんな感じです。『TOSHIBA KING POWER U』と、英語表記になっています。こちらも並べてみると同じように見えますが、下部のJISマーク表記が異なっていて、東京芝浦電気株式会社名義の方は“C8501 R-O-V”、東芝電池株式会社名義の方は“C8501 T-C”の記載となっています。どちらの略号も東芝電池(東芝レイ・オ・バック)東京工場製を示す略号で、東京芝浦電気時代はR-O…から始まる略号(R-O-NやR-O-Tなど)が使われていましたが、東芝電池時代でT-…から始まる略号(T-TやT-Uなど)に変更されました(詳しくは当ブログの「JIS認定番号一覧」を参照)。
ちなみに東芝電池三十年史によると、東芝電池の東京工場で006Pを始めとする積層電池を製造していたのは1982年7月までで、8月に製造ラインを東芝電池高崎工場に移設。これまでに東京工場で生産された積層電池の総数は006Pが2千1百万個、その他7百万個であったとのこと。
底面には東京芝浦電気株式会社名義の方は「79-12」、東芝電池株式会社名義の方は「81-10」の印字があり、それぞれ1979年12月と1981年10月製造の電池であると思われます。
東芝電池の旧社名は東芝レイ・オ・バックですが、電池及び電池応用用品の営業・販売は東芝本体が行っていたためか、社名表記は“東京芝浦電気株式会社”となっていました。1981年4月に東芝電池が誕生すると、今まで東芝が行っていた電池及び電池応用用品の営業・販売を東芝電池が一手に担うことになり、社名表記も“東芝電池株式会社”となります。
改めて見てみると、東芝電池株式会社名義の方は1981年10月製造で、東芝電池が誕生した1981年4月以降の製造ですから矛盾が無い表記となっていますね。
こちらは両方とも東芝電池株式会社名義の電池となっていますが、既に紹介の左「81-10」は印字となっていて、右は「82-08」で刻印となっています。1982年8月製造の電池でしょう。
この電池もJISマーク表記は“C8501 T-C”の表記で、東芝電池東京工場を自称しています。しかし、ここで疑問が残ります。この電池が製造された1982年8月は前述通り、東芝電池高崎工場に製造ラインを移設しているはずでは??
右に置いているのは「84-03(1984年3月)」製造のキングパワーU 006P形で、こちらは表示も“C8501 T-T”で正真正銘、東芝電池の高崎工場製を名乗っています。
底面を見てみると、形状や刻印の字体も全く同じものとなっています(写真だと右の84年製は見えにくいかも)。なので、実際は“C8501 T-C”の表記ではあるものの実はT-T製だったりするのかもしれません。製造ライン移設1ヶ月程度ならまだT-C印刷の外装缶も残ってそうですし…。ここは当時の関係者のみぞ知ると言った所なのでしょう。
最後に勢ぞろいです!底面を除く全面から撮っておりますので、舐め回すように御覧くださいw。写真右の電池は前項で比較した1984年3月製造のキングパワーUで、左2つの後継デザインのものであると思われます。ギザギザが落ち着いたデザインになっていますね。
この頃の東芝の乾電池はサイドにまだ、東芝傘マークが残されていて好きであります。東芝ロゴが現行のものになると消え去ってしまうのですが…。
【参考(引用)文献】
東芝電池株式会社
『東芝電池三十年史』1985年3月発行