ナショナル(松下電器産業、現・パナソニック)が発売していた禁断のアルカリ電池用充電器…、ではなく、一時期発売されていた“充電式アルカリ乾電池”用の充電器セットになります。
ナショナルは初代アルカリ電池である“ナショナルマロリーアルカリ乾電池”を発売していましたが、同じくマロリー名義の充電式アルカリ電池である“充電式ナショナルマロリーアルカリ乾電池”も併売されていた時期があります。
箱の側面。セットの型番は“K-800”。単1の充電式アルカリ電池(AM1R)2本と充電器(BQ-1A)のセットとなっています。
今回入手したものは残念ながら、セットでありながらも充電器のみで電池は付属していませんでした。なまじ電池を付属していると液漏れで箱がダメになってしまう可能性が高かったということを考えると帰って良かったのかもしれません。
充電器の外観です。極めてレトロチックなデザインで時代を感じさせます。充電器のマイナス端子部分は可動式になっており、単1専用と銘打たれてはいますが、単2まではセット出来そうです。
1970年のカタログに掲載されていた本充電器。充電器単体の価格は1500円で電池1個が300円していますから、バラで買ってもセットで買っても同じ価格ですね。
当時の単1アルカリ電池は1個200円でしたから、100円割高になっています。当時はアルカリ電池でさえ需要が無かったと思われる時代なのに、充電式アルカリ電池が売れていたのかがとても気になるところです。
ちなみに、AM2Rという単2サイズの電池もあったみたいですね。カタログには「※いずれも充電できます。」と記載されており、本記事で紹介した充電器では(単一用)と記載がありますから、単2サイズの電池は後で発売されたと推測されます。
充電器上部の拡大。“National”ではなく“NATIONAL”なのが何ともいい感じですね。通電表示ランプはLEDではなくネオンランプ。あくまでも通電表示ランプですから、電池を入れていなくても光ります。
充電器の型番は“BQ-1A”で、BQ型番は現在発売されているパナソニックの充電器においても引き継がれています。もしかしたら、この充電器が始まりなのかもしれませんね。
電池をセットしてみたところ。残念ながら、充電式アルカリ電池を所持していないので、普通に“パナソニックアルカリ乾電池”をセットしてみました。ある意味“NATIONAL”と“Panasonic”の脅威のコラボかも知れませんw。
※:一応この充電器は“充電式アルカリ電池”用の充電器であるため普通のアルカリ乾電池のセットはできませんので要注意です。この写真は一応、単1電池をセットしてみた図ということで。
これが本充電器のパッケージにあったセット例。普通のアルカリ電池である“ナショナルマロリーアルカリ乾電池が”白と黒のツートンであるのに対し、“充電式ナショナルマロリーアルカリ乾電池”は赤と黒のツートンであったようで、充電式電池であることをアピールするためか派手なデザインであったようです。
充電器裏。定格はシールで貼り付けられており、カバーはプラスチックなようなもの、ネジ1本で取り付けられているだけです。
定格表示の拡大。「ナショナル 充電器 1A形」と記載、入力は「AC100V 3VA 50/60Hz」、出力は「DC1.25V 90mA×2」となっています。
中を開けてみるとこんな感じです。基板などは無く、トランスは見られますが、抵抗と整流用と思しきダイオードが見えるだけのシンプルな回路です。
ちなみに回路図に起こしてみるとこんな感じになりました。さすがにこの構造の充電器をコピーする人は居なさそうですから、全掲載でも問題ないでしょう。
この充電器セット、電池以外はフルセットで取扱説明書(ご愛用のしおり)も付属されていました。
使い方。電池は2本でも1本でも充電も可能で、充電時間は15時間。定格による充電時間は14~16時間となっています。24時間以上の充電は電池を痛める原因となるので避けるようにとの記載があります。
電池コレクターとしては取説裏の『■充電式アルカリ乾電池AM1R(単一形)ご使用について』これがメインでしょう。
電池の公称電圧は1.5V、容量は2Ah(2000mAh)と記載されています。
充電式アルカリ電池の特性として完全放電や1.0V以下になると充電できなくなるようで、ある程度残量が残った状態で充電することが正しい使用方法のようです。
なお、この充電式アルカリ電池は1959年に開発されて、本記事で紹介したナショナルマロリー電池以外にも日立マクセルが製造していたようです。保存劣化が少なく、安価であったようですが、過放電・過充電に弱く、充電サイクルが20~40回程度であったようです(※)。
取説を見てみると、繰り返し使用可能であることは書かれていますが、充電使用回数などが記載されていない点が気になります。やはり充電サイクルが少なかったので敢えて書いていなかったのでしょうか?
【参考文献】
トランジスタ技術 1997年5月号
「充電式アルカリ乾電池の評価実験」
CQ出版社, 1997年5月, p348(p347-p352), 染谷克明/村田晴夫/天早隆志
当時の生録ファンが電池の消費が早いオープンリールテープのポータブルレコーダー用に好んで使っていたようです。それでもコスパが悪く、バイク用の鉛畜電池(当時は6Vが主流とのこと)を担いで使っていた人も多かったようです(元生録ファンの祖父の情報)
情報ありがとうございます。
当時で充電出来る電池と言えば鉛蓄電池という時代で信頼性も高かったですから、こんな得体のしれない充電式アルカリ電池よりも鉛蓄電池に流れるのは当然の流れなのかもしれませんね。
充電器の上半分だけ見ると玄関チャイムだと思いそうでした(笑)
この充電器でニカドとかニッケル水素とか充電・・・したら・・・いかん、気になってしまった。
さすがに充電式アルカリ電池(当時もの)の健全固体の残存はないでしょうね・・・